翔ぶ少女レビュー感想

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翔ぶ少女のレビュー|阪神大震災後の長田に起こるホンモノの奇跡

2021-06-29

神戸が舞台の小説『翔ぶ少女』を読了しました。

作者は原田マハ(はらだまは)さんで、関西学院大学出身。

阪神淡路大震災とその後の長田という少し重い舞台です。

でもライトなファンタジーが物語の中心で、そして読みやすい文章なので、思いのほかすらすらと読めます。

神戸が舞台の小説一覧はこちら↓

『翔ぶ少女』の3行あらすじ

  1. 阪神淡路大震災で両親を失った3兄妹は、同じく家族を失くしたゼロ先生と家族になり震災後の長田で生活を始める。
  2. 3兄妹の真ん中の丹華(ニケ)が思春期を迎えると、身体に異変が起きてくる。
  3. ゼロ先生のピンチにニケの翼が羽ばたく。

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『翔ぶ少女』の物語と世界

阪神淡路大震災とその後の長田区が舞台で、震災時の様子や避難所の様子、仮設住宅、復興住宅の様子などが良く描かれています。

物語の舞台は震災時と復興中の長田だけど‥

ただこの小説の取材が開始されたのは、2012年1月17日からの神戸で震災後17年経っています。

そして東北大震災後でもあり、岩手県大槌町でも取材をしています。

作品中には東北のことは描かれていませんが、仮設住宅の描写や人々の暮らしぶりは東北での取材が反映されているそう。

だからなのか、どこか少しだけ阪神淡路大震災時の雰囲気とズレているような気がしてなりません。

どこが?と聞かれると答えようもないのですが‥。

両親を失くした子供たちと医師の新しい家族

震災で両親を失くしてしまった、逸駒(イツキ)、丹華(ニケ)、燦空(サンク)の3兄妹。

1,2,3と名前に順番が入ってますね。

なんか変わった名前~と思ったけど、丹華(ニケ)の名前にこの物語の根幹があるので、兄妹もバランスをとったのかな。

両親を失くした丹華達は、同じく家族を失くしたゼロ先生こと佐元良医師の養子になります。

新しい4人家族は復興中の長田の町で、温かい人々に見守られたくましく生きていきます。

思春期を迎えた丹華の体調の異変

震災から5年。

6年生になった丹華は初恋に目覚めます。

すると丹華の背中にコブのようなものが出来て、皮膚が割れて羽のようなものが生えてきます!

この辺りの描写がなかなか生々しく痛々しくて、羽を生やすのも楽じゃないな‥と。

ゼロ先生のピンチ

ゼロ先生は震災で家族を失くしたけれど、亡くなったのはゼロ先生の妻であり、同じく医者である息子は無事でした。

息子はゼロ先生が母を見殺しにしたと思い込み絶縁しています。

ある日、ゼロ先生が倒れ予後が危ない状態になりました。

ゼロ先生を助けられるのは息子だけのよう。

丹華達は東京に行き、息子先生を説得しようとして、そして東京の空に奇跡が起きます。

『翔ぶ少女』に出てくる神戸

ほぼほぼ長田が舞台です。

ただ、実際の地名などはなくイメージ上の長田の町ですね。

そばめし屋や、ご近所との温かい繋がりなど長田の下町の雰囲気は良く描かれていると思います。

復興住宅が出来た北区が会話上にでてくるけど、ちょっと悲しかった。

もちろん仕方ないことなんだけど。

『翔ぶ少女』の感想(ネタバレあり)

ここからはネタバレありです。

どこまでがネタバレかわからなく、ここまででも大概ネタバレな気はします。

すみません( ;∀;)

最大のネタバレは、丹華が空を飛んだということでしょうか。

6年生の時に初恋のせいで羽が生えてきますが、その羽がすぐに抜け落ちてしまいました。

その後も何度か羽が生えそうにはなるけれど、意志の力で抑え込んでいるように思えます。

そして最後、東京で息子先生を説得するときに立派な羽が生え、東京の空を飛んで息子先生の説得に成功します。

最大の謎は『なぜ丹華に羽が生えるのか?』だけど、名前以外の理由は見当たりません。

そして最後も本当に飛んだのか、それとも丹華の思い込みなのか曖昧な終わり方でした。

羽を見ているはずの息子先生の記憶も失くなっている様子。

ただ6年生の時に、丹華の背中のコブを見た由衣の存在があるんですよね。

羽に関してはスッキリしない終わり方でした。

『翔ぶ少女』のまとめ

少し荒唐無稽感は拭い去れず、童話のような印象を受けます。

でも、震災から、家族の喪失からたくましく立ち直っていく優しく力強い小説でした。

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