私は逆子で、産まれる時はたいへんな難産だったそうです。いざ産まれた時にも私は息をしておらず、肌も真っ白で、泣き声も上げませんでした。
母は死産かと思いギョッとしたようですが、少しするとフッと血が通い泣き始めたとのことです。
幼いころは少し体が弱い子供でした。特に気管支が弱く、風邪をひくと咳がひどかったのを覚えています。
成長するにつれそのような症状はなくなり、スポーツもまんべんなくできるようになりました。
自分に霊感があるとは思いません。ただ、少年時代には数々の不思議な体験があります。それでも幽霊とかはあまり信じていません。
それらの体験談はまた別の機会にして、今回は父方の実家にまつわるお話をします。
父の実家はお寺です。調べると分かってしまうので、場所や特徴は伏せさせていただきます。ただ、由緒あるお寺です。
祖父が僧侶でした。
寡黙な人で、私はあまり会話をしたことがありません。少し不思議な雰囲気の人で、幼少のころの私はその雰囲気が怖くて、何となく避けていたからでしょうか。
私が中学の時に祖父は亡くなりましたが、父は跡を継ぎませんでした。私は次男で兄がいますが、兄も私も継がず、父も強要することはありませんでした。
しばらくはお寺を維持するために祖母を僧侶の名義として置いていました。
時が流れ、遠縁の親せきがお寺に入ることになりました。
その方には息子が2人いました。奥さんを含め一家4人でお寺に住み、日々のお勤めをしていました。
しかし祖父の法事が近づくころ、まだ赤ちゃんだった次男が突然死するという不幸が起こったのです。
痛ましい出来事でした。
その当時、私は一人暮らしをしており、仕事が忙しく参列できませんでしたが、葬儀は自宅でもあるお寺で執り行われました。ご両親の心痛はいかほどだったでしょうか。
また少し時間が経ち、亡くなった子供の1周忌法要がありました。祖父の命日と近いため合わせて執り行い、その時には私も参列しました。
一通り法要を終え、私は実家で1泊したのですが、夜に母から信じがたい話を聞かされました。
私が産まれてすぐのころにお寺に行った時、まだ存命だった祖父は赤子の私と私の母を見て、「この寺には2人目の跡継ぎは存在しないことになっている」
というようなことを言ったそうです。
母も一言一句までははっきり覚えていないそうですが、少しおかしな言い回しだったそうです。
その時は、孫が産まれたばかりなのに変な事を言うなぁ、くらいに思ってしばらくするとそのこと自体忘れていたのですが、お寺の子が亡くなった時に、フラッシュバックのようにその言葉が蘇って背筋が凍り付いたそうです。
2人目の跡継ぎ。
亡くなった子供は次男。2人目の跡継ぎだったのです。
もし私の父がお寺を継いでいたら、次男の私は今、この世にはいなかったのでしょうか。
