これは聞いた話なので真偽のほどは分かりませんが、知り合いの周辺で起こった話です。
当時、心霊スポットなる怖い場所に行くのが4人のグループの間で流行っていました。4人はA、B、C、Dとしておきます。私にこの話をしてくれたのはBです。
まぁ、ほとんどの人がそうであるように、彼らもまた今までに心霊スポットで心霊体験などしたことなどありませんでした。
彼らが行った建物の場所や種類に関しての記述を避けますが、その日も夜に男4人で集まって、とある場所に車で向かったそうです。
荒れた細い道を抜けた先にあったのは、闇の中にうっすらと浮かび上がる荒れ果てた低階層ビル。
草むらに車を停めて、4人は建物に向かいました。懐中電灯4個分とビデオカメラのモニター以外は光るものは何もありません。
長い廊下を4人で歩いていきます。
「あれ?」
不意にAが言いました。
「え、なに?」、「どうした?」
Bや他の2人は不安になり、Aに聞きます。
「あ、いや、何でもない」
「驚かすなよ」
「ごめん、ごめん」
などと言いながら、歩を進めました。
廊下は建物をぐるっと1周する形になっていて、左手側が窓、右手に部屋が並んでいる構造だそうです。
窓はほとんど全てが割れていて、部屋の中もわざわざドアを開けなくても見える状態。
4人は一つ一つの部屋を外側から散策しながら、建物内を1周しました。上階へ続く階段は封鎖されていたため、上がることはできませんでした。
「強行突破するか?」と誰かが言いました。
「やめよう、帰ろうぜ」とAが言いました。
「怖いのか?」
「それもあるけど、俺たちもう大人なんだぜ。何かあったら社会的責任もある」
Aの現実的な言葉に冷めたのか、行く気満々だった3人も帰ることに同意したそうです。
「大丈夫か? 震えてるぜ」
「うん、まあね」
4人は入った所と同じ出入り口から外に出て、車に乗って帰りました。
その時も霊現象のようなものは起こりませんでしたが、雰囲気はとても怖かったそうです。
数日後、彼らはAの家に集まっていました。いつもの恒例の行事、撮影した映像をみんなで観るためです。
全員が揃うと、さっそくAはテープを再生しました。
「え? お前、声震えてね?」
「お前もな」
どうせ何も映ってない。そうタカを括っていたため、いつものように全員ふざけていました。
ところが、廃墟に侵入してから少しして・・・
「えっ!?」
一斉に4人が声を上げたそうです。
「巻き戻し巻き戻し!」Bが言いました。
その声に促され、Aがテープを巻き戻し、再生しました。
建物のを廊下がぐるりと1周するような造りになっており、その廊下の突き当りに白っぽい影のようなものが映っていたそうです。
影はすぐに右に折れて見えなくなりました。
影に気づかない4人はそのまま直進し、角まで来ると、右に折れました。
その先の角にはまた、例の影が映っていました。4人が進むと、サッと再び見えなくなりました。
次の角でも同じことが起こっています。
人なのか獣なのか、暗いうえに輪郭がはっきりとは映っていないため、判別できません。
そうこうする内、塞がれた階段の所で4人が話し合い、引き返して車まで帰りました。そこで映像は終了です。
4人とも声が出ず、シーンとした嫌な空気になったそうです。
「何だあれ」
「知らねえよ」
シーン・・・
「あれ、あの・・・、何とかって番組に送ってみるか。お金貰えるかもしれないし」
「そうだな。何なら、このテープも処分してくれるんじゃないか?」
「だめだっ!!」急にAが大声を張り上げたそうです。
「何だよ急に」
「いや、ごめん。とにかくダメ。このテープは俺が預かるから、今日はみんな帰ってくれ」
Aにそう言われて、Bと他の2人も帰ることにしました。その時のAはただならぬ雰囲気だったそうです。