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神戸が舞台の小説「CINEMA レベル9」映画好きにもおすすめ!

2018-04-09

神戸は、映画発祥の街としても独自の奥深い文化を持っています。

日本で初めて映画を輸入した都市としても有名で、日本初の映画雑誌「キネマ旬報」が発刊された歴史を誇っています。

最近では全国展開しているシネコンに押され気味で、昔ながらのミニシアターが次々と閉館しているのは寂しいかぎりです。

その一方では「Cinema KOBE」や「パルシネマしんこうえん」を始めとする、地元の人たちから愛され続けながら頑張っている映画館の存在には心温まるものがあります。

そんな神戸と映画の魅力を感じることが出来る、不思議な1冊と出会いました。

小説「CINEMA レベル9」は、1987年に筒井康隆によって小説新潮に発表された短編小説になっております。

現在では新潮社から刊行されている短編小説集「夜のコント・冬のコント」で読むことが出来ます。

 

物語の舞台に設定されている新開地は、神戸市兵庫区の南部に立地する古くから繁華街として栄えてきた地区になります。

著者自信を投影したかのような主人公である劇団の顧問をしている「おれ」が、ある日突然に奇妙な映画館へと迷い込んでいくストーリーです。

名作映画と変わりゆく神戸への並々ならぬ思いが、随所に散りばめられていました。

筒井康隆は1934年に大阪市の北堀江で誕生しますが、結婚後に妻の実家に近い神戸市垂水区へと移り住みます。

本作品の中でも六甲山系と平行して東西に細長い神戸市街地の街並みや、海側と山側を北へ北へと駆け抜けていく地下鉄の風景描写にはリアリティーを感じることが出来ます。

1995年には阪神・淡路大震災によって自宅が被災しますが、何事にも屈することなく小説家としての創作活動を続けて行きます。

文筆業ばかりではなく舞台俳優や映画への出演など幅広いジャンルで活躍してきた、貴重な経験が本書の中でも思う存分に活かされていました。

全編を通して味わい深いセリフや忘れ難い会話が込められているこの本の中でも、1番に印象に残ったセリフは「東西の全フィルムと焼死できれば本望」という言葉でした。

閉所恐怖症気味で極端に火事を恐れていた主人公が、意を決して地下9階にある映画館へとエレベーターに乗り込んでいく場面には胸を打たれました。

映画監督の山中貞雄や喜劇俳優のマルクス兄弟などの、古き良き時代の名作に纏わる蘊蓄やこぼれ話も満載で面白かったです。

神戸を愛して止まない方や、古今東西の名画に詳しい人たちには是非とも手に取って頂きたいと思います。

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